この記事を書いているのは2025年だが、2023年の3月末に帰国していた。早いもので帰国から2年以上経っているのだけど、久々にお会いした方などまだイギリスにいると思われていることもあり、区切りをつけたい気持ちも出てきたので4年以上ぶりの記事を。
移住生活の記憶
当初は1年程度で帰国する予定だったのだけど、 新型コロナや仕事上の変化もあり、何よりきちんと何かコトを成したかったこともあって、結果的に3年近くの滞在となった。帰国してからおよそ同じくらいの期間を日本で過ごしたわけだけど、今戻ることになったら喜んで戻るくらいには良い場所だったと思う。
既に記憶が薄れていたりする部分もあるのだけど、忘れないうちにそれぞれの年の記憶を。
2020年
以前の記事にも書いたのだけど、とにかく試行錯誤の日々。移住した初日からシャワーが下の階に水漏れしたり、本当に防音の概念が薄い家だったので上の階の足音を聞きながら寝る生活で、あまり眠れずに来たのはミスったかなーと思う時もしばしば。
買い物ひとつとっても、スーパーの違いがわからない、日本にあるアレはどうやったら手に入るのか、ネット通販を確実に届けてもらうにはどうするのか、などなど…
それに加えてまだ新型コロナはワクチンもなかった時期。イギリスは外出禁止令が日本と比較してもハードだった。生活に関わるオペレーションもかなり制限されており、外食はおろか大好きなパブも全然開いてない。日も短いので家に閉じこもり、仕事が終わるとあたりは真っ暗。たまに散歩に出たりスーパーに買い物に行くのが楽しみの日々… という感じで、あっという間にいわゆる冬季うつっぽい感じになった。クリスマス時期も外出制限が続き、当初はクリスマスの週に外出制限が解除されそうだったところ、どんどん短くなっていき最終的にクリスマス当日だけになった時はまあまあ凹んだ。
それでも、家族が一緒だったし、同じ状況の同僚も多くいて話すこともできたし、家は広くなって体を動かすこともできたので、どうにかなったかな〜 という感じ。単身移住してたらかなりキツかったと思う。
2021年
ワクチン接種が始まり、春くらいから段階的にロックダウンが解かれる流れになった。渡英してから外で飲めるようになるまでに半年かかったけどめっちゃ感動したのを覚えている。
少しずつ解けていく外出制限に合わせて、車を買ったり、ピクニックに出ていた。Voiという、日本で言う Luup のような電動スクーターのサービスが始まって、街中の色々なところに行けたのも良かった。車や歩行者との交通問題で怒られもしていたけど、日本ほど叩かれていなかったのは、自転車が車道を走るのが普通だからなのもあるだろうな〜。
ロンドンなど他の都市にも行けるようになったけど、初めてロンドンに行った理由は親知らずを抜くためだった…

この年からキャンプにハマりだした。外出制限の影響を受けないのはもちろんなのだけど、イギリスのキャンプ人気が日本より過熱しておらずキャンプ場の予約は取りやすいし、何より空間が広いので気持ちがよかったのが大きい。農場のかたわらをキャンプ場にしていたりするので、近くの醸造所で地ビールを買い、農産物を買って BBQ みたいなことが割とどこでもできた。
自然豊かな (住んでいたエリアも豊かではあったけど) ウェールズにキャンプに出かけて、山を登ったり古城見学するのも良い経験だった。
屋外イベントも徐々に解禁されて、ローカルビールフェスや、名物だったバルーンフェスタも観られた。風で飛ばないことも多いので、飛んでよかったな。

夏くらいから海外旅行も大幅に解禁されて、はじめて他の国に行くこともできた。最初に行ったのはスペインのマヨルカ島。食事も美味しいし、まだ旅行控えの時期でもあったのでどこも空いており、長期休暇というやつをようやく過ごせた気になった。
これを皮切りに、以後ものすごい勢いで海外旅行に行くことに。
クリスマスも盛大に過ごせて、年末は氷のアイスランドで過ごすというかなり濃密な1年 (というか半年) になった。

2022年
ほぼ全ての制限もなくなり、生活も仕事もうまく馴染んできた頃。
イギリスの冬は日も短く、クリスマス以外 (1~2月) は居てもあまり… というところから、フランスやスウェーデンといった雪のあるエリアによく出かけた。
1度だけ冬キャンプに出かけたけど、朝の気温が低すぎて死ぬかと思った。ただ夜の景色はよかった。

家族や仕事など、日本を離れてからケアしたいことが増えてきて、一時帰国の時期を考えていたのだけど、2週間の隔離が足を遠ざけていた。3月からついに条件付きで隔離が数日に短縮されることになり、大急ぎで一時帰国。1年半ぶりの日本はとても嬉しかったのだけど、飛行機内でコロナ感染者がいたようで、結局隔離はフルで受けることになった。あれほど見たかった日本の景色を見ながら宿泊先でひたすら自炊していたのはしんどかった…
1ヶ月半ほど滞在して、家族・友人・食事・体験などなど日本のあれこれを全て身体に詰め込み、はちゃめちゃな量のお土産を持ってイギリスに戻った。
ピクニック・キャンプ・スポーツ (ラグビー好きなので地元ラグビーチームがあったのが嬉しかった)、ミュージカルや料理などあらゆることを全力で楽しみにいった年だった。海外にも相当な回数行ったこともあり、「予定のない休み」はほぼなかった。
平日はほぼフルで仕事をして、週末に遊び、また仕事をするという生活だったので、なかなか体力を要する動き方でもあったのだけど、持てる行動力を全て使った。
仕事の状況も段々と変わってきており、この年の終わりに差し掛かる頃には、内心で帰国することを決めて準備を始めた。準備といっても、やり残したことをやる、というくらいのものだけど…
年末年始はオーストリアのウィーンで過ごした。年末のクラシックコンサートをウィーンで聴くというのが人生でやりたいことの一つだったので、達成できて嬉しかった。

2023年
仕事上の役割も変わり、いよいよ正確な帰国のタイミングも決めて準備を進めた。信じられないことに、イギリスに居ながらハリー・ポッター関連の場所をほとんど訪れていなかったので出かけていったり、親や家族に遊びに来てもらって案内したり。
仕事も割と大変なことが連続していた時でしたが、まず日本に帰るまで全力!ということにして、どうにか大きな事故もなく気合で乗り切った。
生活
周囲の生活習慣はじめ、日本と違う点は多々あったけど、総じて良かったなと思う。居住することで小さいことから大きなことまでトライできたことが様々あった。
- 普通にパブで飲む
- 現地の友人をつくる (日本人や同僚以外で)
- オーブン対応の食品類が多いので、オーブンでどうにかする
- クリスマスツリーを生木で買う
- 冬が近づくと「クリスマスツリー農場」がオープンするので、行って好きな木を予約しとく。クリスマス前になったら切って持って帰る
- 生木で飾る家が多いので、ゴミ収集の日も「ツリー収集日」が年始に設定されてる
- 本場の中国食材っぽいやつで色々作る
- アジアスーパーに行くと圧倒的に品揃えが良いので色々買ってしまう。特に刀削麺と火鍋の素 (底料) はよかった
- めっちゃでかいターキーレッグを焼く
- Beer Pong をやる
- 病院に行く
- かかりつけ医 (GP) から救急 (A&E) 、人生で初めて救急車で運ばれるまでをやった
- 良い経験だったと思いたいが本当に大変だった…
- 庭や公園で気軽な BBQ をする
- いわゆる飲み会としては居酒屋的なところで飲むより多かったかもしれない
- 車を買う
- 車選び、価格交渉から納車まで。せっかくなので MINI を買ったけどほんと良い車だった
- キャンプに行く
- これも旅行ではなかなか行けないと思う。結構色々な場所に行った

などなど。まあ普通のことが多いのだけど、現地でやれてよかったなあと思うことばかり。
滞在中に、 Brexit があって急に EU 圏のものが買えなくなったり、 クィーンが亡くなったりという国の変化も直接感じられた。
地域性なんかもあるとは思うけれど、一番心配していた人付き合いについても、よくネットで言われているような差別だったり塩対応を受けるなんてこともなく、同じアパートの夫婦と日向ぼっこしながら雑談するみたいなイベントがあったり。総じて良い人が多かったなというのが感想だった。
築220年ほどの家に住んでいたのだけど、隙間風に悩まされることもなかった。ドアが開かなくなるとか、ウミネコが早朝から鳴きまくってうるさいとか、夜中にシャワーホースが破裂して水浸しになったりとか、そういうことはあったけど。
食事
聞かれることがすごく多い話題。食材は意外と豊富で、日本ではあんまり見かけない野菜もあり、料理は色々と楽しむことができた。特に肉類は赤身中心だしラム肉がいっぱい売られてるしで最高。逆に魚は厳しかった。
アジアスーパーに行くと慣れた食材も手に入る。出前一丁と辛ラーメンは神。旅先でも売ってるので食事が合わないときに買って食べたりしてた。
外食は…外すと割と厳しいものが出てくることもあった。けど選べば普通に美味しい。多国籍なので、インド、中華はじめアジア料理も本格的なものがあるし、ステーキハウスやハンバーガーも美味しい店が多かった。チェーン系だと Nando’s もよかった。ラーメンは「あそこは美味しい」という噂を聞いては裏切られてきたけど、滞在後半になってついに近くに普通に美味しいラーメン屋が開店して嬉しかった。ロンドンには一風堂や日本系レストランがたくさんあるけど、食べるためだけに2時間以上かけて行かないかな…という感じ。寿司は… 日本で食べましょう。ヨーロッパ全体なら、マルタの寿司は比較的美味しかった。
個人的には、金曜の夜に家の裏のフィッシュアンドチップス屋でテイクアウトして、食べながらビール飲んでゲームしたり映画を見るのが幸せな時間だった。
海外旅行
色々な国や都市に行く機会があって、これもよかったなあと思う部分。
街の近くに空港があり、そこから LCC がバンバン飛んでいるので、うまく噛み合えば例えばイギリスからハンガリーまで片道3000円くらいで飛ぶことができた (ロンドンに行くお金より安い)。
これについては思い出がありすぎるので、記憶が残っているうちにそれぞれ記事にしたい。
行ったのは20カ国、訪れた都市は40都市くらい。
スペインだけで8都市 (島など)。好きすぎ説もあるけど、暖かくて、食事が美味しくて、見るものもたくさんあるので、行かない手がなかった。
どの国も建物や自然、食事、人、どれをとっても結構違っていたりして、非常に良い経験だった。特に北欧やアイスランドはあと数回は行きたい。。。
仕事
休日に旅行に出かける分、平日は割とキリキリ働いていた。日本との時差を埋める必要があり、朝7時には起きて会議に入り、昼は少し休んだりしつつ夜まで仕事、食事して深夜になるとまた日本が起きてくるので状況によってはそこから… みたいな生活。良い塩梅が見つかるかなと思っていたけど、結局最後まで体力勝負だったかもしれない。
実際にやっていたことは本当に様々で、チームのグローバル化 (と現地採用) をしながら現地の環境や組織をより良くするトライや、日本の仕事を普通にするといったこともあった。現地オフィスで実際に会いながら議論をするのはとても良かったし、大変ではあったけど充実した仕事だった。
帰ってきた
仕事上の色々な変化はもちろん、渡英していた間に家族にも色々な変化があり、帰国することにした。
戻ってきて思うのは、やはり日本は期待値の高い国だなということ。コンビニに行けば24/365で何でも売ってる (そもそも日曜に店が開いている!)、配達も3時間スロットで遅れない、設備はそんなに壊れない、病院だって行けば受け入れてくれる、母国語で生活できる、トイレはきれい。
イギリス生活で良くも悪くも自分以外のものごとに対する期待値が下がっていたけど、日本に戻ってから半年くらいでそうしたものも戻っていった。人間、あると期待してしまう生き物なんだなあと思う。
仕事もたくさんの変化があり、結果として2023年で退職し、2024年からスタートアップで働いている。自分が胸を張ってやり遂げたといえることもあるけど、そうでない部分もたくさんあり、あまりにたくさんの思いがあるので退職エントリは心の中に。
海外への挑戦だけでなく、人生を大きく左右するような色々な挑戦の機会を得られた。たくさんの迷惑をかけましたが、支えてくれた同僚諸氏には心から感謝しています。
自分の人生の中で、海外で働くという機会が訪れるとは全く思っていなかったところもあり、最初に話を受けた時には迷うところもあった。が、本当に行ってよかったと思う。同じようなチャンスを得られる方がいればぜひ踏み出してほしいし、そういうチャンスを作って人の背中を押せるような仕事をこれからもしたい。
英語力とか、気になることはあるかもしれないけど、なんとかなる。自分が「外国人」になって、よその国に住み、働くという経験はとても大きなものだった。日本のコンビニで働く外国人は多いけど、すごいなと思ってしまう。イギリスの店で店員やれと言われたらたぶん泣く。
戻ってきてみて、日本もさらに好きになった。母国語で、当たり前レベルの高いサービスを受けられる嬉しさよ。
インターネットには海外で起きていることや、他国の人と共に暮らすことについて、たくさんの刺激的なことが書かれている。イギリスについても然りだが、自分が住んだ正直な感想は、その多くが誇張されたもの、というより、本当に切り取られて拡大された一部だなということだった。生活は、多くの人にとっては普通だ。まずい食事ばかりではない。紅茶でなくコーヒー派もいる。皮肉ばかり言われることもない。天気は確かに悪いけど、夏は最高。
まだまだ書きたいことは山ほどあるけど、キリがないので一旦ここまで。
日本に戻ってきて、人生で初めて家も買ったし、子どもも産まれた。変わっていく生活は大変だけど、楽しみながらやっていきたい。
